近年、飲食店やスーパー、コンビニなどでも、「クラフトビール」を目にする機会が増えてきました。
一方で、
「そもそもクラフトビールって何?地ビールと一緒?」
「クラフトビールの歴史は?」
「クラフトビールの魅力や楽しみ方は?」
といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、クラフトビールの定義や歴史、楽しみ方についてご紹介していきます。
クラフトビールに興味があるという方は、ぜひ参考にしてみてください。
クラフトビールとは?
クラフトビールを簡単に説明すると「小規模で独立した醸造所が生産するこだわりのビール」のこと。
まずは、クラフトビールの定義や地ビールとの違いについて確認していきましょう。
クラフトビールの定義
じつは、現在のところクラフトビールについての明確な定義は存在しません。
あえて日本におけるクラフトビールの定義を挙げるとするならば、全国地ビール醸造者協議会(Japan Brewers Association)が提唱する以下の定義が一般的です。
- 酒税法改正(1994年4月)以前から造られている大資本の大量生産のビールからは独立したビール造りを行っている。
- 1回の仕込単位(麦汁の製造量)が20キロリットル以下の小規模な仕込みで行い、ブルワー(醸造者)が目の届く製造を行っている。
- 伝統的な製法で製造しているか、あるいは地域の特産品などを原料とした個性あふれるビールを製造している。そして地域に根付いている。
(引用元:「クラフトビール」(地ビール)とは | 全国地ビール醸造者協議会)
上記を要約すると、
- 大手資本から独立していて
- ブルワー(醸造者)の管理が行き届く小規模生産で
- 伝統的な製法、もしくは特産品などを使った個性的な地域密着型ビール
と言えます。
ちなみに、クラフトビールの本場アメリカのブルワーズ・アソシエーション(Brewers Association)は、クラフトブルワー(クラフトビールの醸造者)について以下のように定義しています。
- Small
Annual production of 6 million barrels of beer or less (approximately 3 percent of U.S. annual sales). Beer production is attributed to a brewer according to rules of alternating proprietorships.- Independent
Less than 25 percent of the craft brewery is owned or controlled (or equivalent economic interest) by a beverage alcohol industry member that is not itself a craft brewer.- Brewer
Has a TTB Brewer’s Notice and makes beer.
(引用元:Craft Brewer Definition – Brewers Association)
上記を要約すると、以下のとおりです。
- 小規模…年間ビール生産量が600バレル以下(米国年間売上高の約3%)であること。つまり小規模生産であること。
- 独立…酒造メーカーに所有もしくは運営されている場合、全体の25%未満であること。つまり独立した醸造所であること。
- ブルワー…TTBの承認を受け、ビールを製造していること。
※TTB(The Alcohol and Tobacco Tax and Trade Bureau)とはアメリカのアルコール・タバコ税貿易局のこと。
これらはアメリカにおける定義ですが、「小規模」かつ「独立している」という点では、日本のクラフトブルワーとも共通しています。
クラフトビールと地ビールに違いはある?
ところで、クラフトビールと地ビールの違いについて気になっている方も多いのではないでしょうか。
地ビールはその響きから、地域のお土産的な印象を持つ人もいらっしゃるでしょう。
一方のクラフトビールは、「Craft(工芸品、手作り)」という言葉のイメージから、職人のこだわりがつまったビールという印象を受ける人が多いかもしれません。
このように、地ビールとクラフトビールを異なるニュアンスで呼び分けるケースもありますが、どちらも醸造者が丹精を込めて作ったものであり、基本的には「クラフトビール≒地ビール」という認識で問題ないでしょう。
クラフトビール(地ビール)の歴史
次に、クラフトビール(地ビール)の歴史について簡単に振り返っていきましょう。
酒税法改正によりビールの小規模生産が可能に
日本のクラフトビールの歴史は、1994年4月の酒税法改正から始まります。
この改正により、ビールの年間最低製造量が従来の2000キロリットルから60キロリットルまで緩和されました。
これにより、大量生産可能な大手メーカーしか実質的に認められていなかったビールの製造・販売を、小規模な事業者でも行えるようになったのです。
「地ビールブーム」の到来と終焉
1994年の酒税法の改正以降、全国各地の小規模な事業者がビールの製造・販売を開始し、いわゆる「地ビールブーム」が訪れます。
ただし、当時の地ビールの多くは観光客誘致のためのお土産的性質が強く、ビールとしての品質を追求したものは決して多くありませんでした。
結果として2000年代の前半には「(お土産的)地ビールブーム」は終焉を迎えてしまいます。
盛り上がりを見せる「クラフトビール」
地ビールブームが過ぎ去った後も、一部のブルワリーは美味しくて個性豊かなビールづくりに情熱を注ぎ続けました。
その後、小規模なブルワリーが生産するこだわりのビールを「クラフトビール」と呼ぶ気運が高まり、国際大会で入賞を果たす日本のクラフトビールも登場し始めます。
そして現在、日本全国でこだわりのクラフトビールが生産されており、クラフトビールを楽しめる飲食店やバー、クラフトビール専門店も登場するなど、クラフトビールブームとも言える盛り上がりを見せているのです。
クラフトビールの魅力・楽しみ方とは?
次に、クラフトビールの魅力・楽しみ方として、以下の3点をご紹介します。
- 小規模生産の特別感
- 多様なビアスタイル
- 個性的なラベルデザイン
それぞれ詳しく見ていきましょう。
小規模生産の特別感
クラフトビールの魅力のひとつとして、小規模生産という特別感を挙げることができるでしょう。
大手メーカーのビールと異なり、クラフトビールは流通量が少なく、購入できる場所が限られていることも珍しくありません。
「いつでもどこでも買えるビール」とは違った、「一期一会」的な特別感を楽しむことができるでしょう。
多様なビアスタイル
多様なビアスタイルを楽しむことができるのも、クラフトビールの魅力です。
ビールは原料や醸造方法によって100種類以上のスタイルに分類できますが、日本で一般的に流通しているビールの大半は「ピルスナー」という種類です。
クラフトビールは、ピルスナー以外にもさまざまなスタイルのビールが作られており、醸造者のこだわりがつまった個性的かつ多種多様なビールが数多く販売されています。
色々なクラフトビールを飲み比べてみたり、自分好みのビールを探したりといった楽しみ方ができるのも、クラフトビールの魅力だと言えるでしょう。
個性的なラベルデザイン
個性的なラベルデザインを楽しめるのも、クラフトビールの魅力と言えます。
クラフトビールのラベルは、シンプルを追求したデザインやポップで可愛らしいデザインなど、ブルワーのコンセプトや世界観が前面に押し出された個性的なデザインが多いのが特徴。
まるでアートを鑑賞しているかのように、「どんなビールなんだろう?」と想像力が掻き立てられます。
レコードを「ジャケ買い」するように、気に入ったデザインのクラフトビールを試しに買ってみるのもひとつの楽しみだと言えます。
まとめ
今回は、クラフトビールの定義や歴史、魅力や楽しみ方をご紹介しました。
基本的な知識を得ることで、クラフトビールをより楽しむことができるはずです。
今回ご紹介した情報も参考に、個性豊かなクラフトビールを楽しんでみてはいかがでしょうか。